映画「それから」あらすじ

長井代助は間もなく30歳を迎えようとしながらも就職することなく、日がな一日読書をしたり音楽鑑賞に出掛けたりとのんびり暮らしていました。独身でしたが身の回りの世話は書生の門野と昔からいる老女中がやってくれるために、何一つ不自由はありません。月に1度代助は本家に足を運んで、役人を辞めた後に実業界に入って財を成した父親の得から生活費を受け取ります。30才にもなってのらりくらりしていることを長々とお説教されたり、兄・誠吾の妻である梅子にからかわれたりするのは何時ものことです。ある時に中学時代からの知り合いである平岡常次郎の妻、三千代が代助のもとを訪ねてきました。平岡は代助とは対照的にエリートコースを歩んでいましたが、妻の三千代との仲は余り上手くいっていません。何時しか代助は三千代を愛するようになりますが、結婚して所帯を持てば息子も少しはしっかりするだろうと父に遠縁の資産家の娘との縁談を薦められます。親の言われるまま安定した将来を選ぶのか、経済的な援助を打ち切られて勘当を言い渡されとしても心から愛する人を選ぶのか。悩み抜いた末に代助は敢えて苦難の道のりを選択し、三千代とふたりで生きていくことを決意するのでした。

映画「それから」感想

ハードボイルドなイメージが強かった松田優作が、何とも情けない主人公・長井代助に扮していて驚かされます。森田芳光監督による繊細な演出によって、原作のイメージを損なうことなく映像化されていて嬉しいです。ヒロイン・平岡三千代を演じている若き日の藤谷美和子の、美しくも何処か儚げな佇まいも心に焼き付きました。今の時代の価値観や考え方からするとニートや引きこもりに分類されてしまうところを、明治時代には「高等遊民」として捉えていたところが面白かったです。無職のくせに一軒家を構えて書生まで侍らせて気の向くままに学問に打ち込んでいく、代助の気だるい日常生活の風景がユーモアたっぷりでした。ある日突然の友人・平岡との再会によって、止まっていた時間が動き出していくようなシーンが印象深かったです。周りの人たちとの関係性や自分自身の人生に対しても逃げ続けてきた代助が、初めて愛する人のために覚悟を決めるラストが感動的でした。

映画が好き

気になった映画はレンタルやテレビではなく、なるべく映画館に足を運んで見るようにしています。本作品のような30年以上前に公開された作品もリバイバル上映されていますので、こまめにミニシアターを回ってみたいです。